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100年に1度の大雨とは。年1%を30年分に直すと超える確率は26%
2026.09.09 GISデータ基盤・地理空間AI
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水文の統計にたまった確率の数字は、拠点をいつ、いくらかけて守るかの判断に使える形へ直して初めて経営の材料になります。国土地理院は「年超過確率1/100規模の洪水」を「1年間にその規模を超える洪水が発生する確率が1/100(1%)であることを示すもの」と説明し、「これは、洪水が100年間隔で発生することを意味するものではありません」と続けています[1]。毎年1%を30年分掛け直すと、一度も超えない確率は0.99の30乗で約74%です。裏返すと、30年のあいだに1回以上超える確率が約26%あります。ただし、これはその規模の降雨や洪水が発生する確率であって、工場が浸水し、休業する確率そのものではありません。止水板や設備かさ上げを見送るかどうかは、この26%に拠点ごとの浸水条件と被害の受けやすさを重ねて判断する必要があります。「100年に1度」という言い方は、その先送りの根拠になるのでしょうか。

年超過確率は1年あたりの数字

気象庁は再現期間を「ある現象(例えば日降水量100mm)が平均的に何年に一回起きるかを表した値」と定義し、その再現期間に一回起こると考えられる降水量を確率降水量と呼んでいます[2]。国土交通省の河川砂防技術基準では、超過確率の逆数が再現期間だと整理されています[3]。再現期間100年と年超過確率1/100は、同じ数字を裏返しに書いたものです。

この定義には「平均的に」という条件が付いています。気象庁は「『再現期間100年の確率降水量』とは、『長い期間を平均した場合に100年に一回起こる大雨』という意味で、実際にはある100年の間に二回起こることもあれば一回も起こらないこともあり得ます」と説明しています[4]

東京都建設局も洪水浸水想定区域図のQ&Aで「年超過確率の雨量は、毎年1/Nの確率で○ミリ規模の雨が降ることを意味します」と書いています[5]。年超過確率は、順番待ちの行列の番号ではなく、毎年引き直すくじの当たり確率です。

これらの定義は、どれも1年という単位のまま書かれています。会社が拠点を持つ年数は1年ではありません。1年あたりの確率を、拠点を持ち続ける年数の側へ移す作業が残ります。

保有年数を掛けると桁が変わる

計算そのものは単純です。年超過確率が毎年1/Tで一定なら、n年のあいだ一度も超えない確率は(1-1/T)のn乗で、少なくとも1回超える確率はその残りです。定義から素直に計算すると、次の表になります。

年超過確率(再現期間) 10年間で1回以上 30年間で1回以上 50年間で1回以上
1/10(10年) 約65% 約96% 約99%
1/30(30年) 約29% 約64% 約82%
1/50(50年) 約18% 約45% 約64%
1/100(100年) 約10% 約26% 約40%
1/1000(1000年) 約1% 約3% 約5%

この表は、毎年の確率が一定で、各年の当たり外れが互いに影響しないという二つの前提の上に成り立つ比較用のモデル値です。現実には、気候の変化によって年ごとの確率が動くことも、複数年の現象に相関が生じることもあります。その場合は年ごとの超過確率と相関を考慮して計算し直す必要があります。それでも、毎年1%とは「100年間は起きない」という意味ではなく、複数年を保有する判断では累積確率へ直して見る必要があります。

拠点が複数あると、数字はさらに動きます。同じ条件の拠点を5か所持ち、雨の当たり外れが拠点どうしで無関係だと仮定すると、30年で少なくとも1か所が1/100の雨を超える確率は約78%になります。一方、5拠点が常に同じ雨にさらされる完全連動の場合は、1か所ぶんと同じ約26%です。実際の値は拠点間の降雨の相関によって変わるため、78%は上限ではなく、拠点間が独立するケースの参考値です。

経営の判断に必要なのは、拠点間の降雨の相関がどの程度あるかです。離れた拠点ほど相関が低いとは限らず、台風や前線によって広い範囲が同時に影響を受けることもあります。一方、同じ工業団地の5棟は同じ雨にさらされる可能性が高くなります。相関が低い拠点群では「どこか1か所は当たる」を前提に代替生産と在庫の置き場を考え、相関が高い拠点群では「当たれば複数が同時に止まる」を前提に止水と代替能力を組み合わせます。同じ1%から出発しても、拠点の配置によって投資の置き場が変わります。

分母のほうが動いている

もう一つ、確率の側にも動きがあります。1/100という値は、過去の観測から推定した数字です。標本が増えれば推定値も変わります。国土交通省の2021年改訂の提言は、2010年までの年最大流域平均雨量で算定した1/100確率雨量に対し、同提言の作成時点における最新年までの標本を用いた場合の増減率を水系ごとに求め、109の一級水系で算術平均をとると約2.7%程度増加していると報告しています。ただし同じ資料は「個別に見ると減少する水系もある」とも書いています[6]

将来側の変化は、もっと大きく見積もられています。提言がいう2℃上昇時とは、世界平均の地上気温が産業革命当時と比べて2℃上昇した状態を指し、時期はおよそ2040年頃と置かれています。国土交通省の技術検討会は、この2℃上昇時の降雨量変化倍率を、全国の一級水系の治水計画で対象とする降雨に適用して試算しました。その全国平均値について「降雨量の変化倍率が1.1倍であるが、治水計画の目標とする規模(年超過確率1/100)の洪水の流量の変化倍率は約1.2倍になる」「現在の河川計画で目標としている降雨量や流量について見ると、その規模の洪水の発生頻度は約2倍になる」と述べています[6]

頻度が2倍とは、いま1/100と呼んでいる規模が1/50の側へ寄るということです。年超過確率2%の気候条件が30年間続くと仮定して計算すると、1回以上超える確率は約26%から約45%に上がります。現在から将来へ確率が徐々に変わる期間を評価する場合は、年ごとの超過確率を用いて計算する必要があり、この45%をそのまま今後30年間の値とはみなせません。さらに、この2倍は全国の一級水系を平均した試算値であって、特定の拠点の前を流れる川の値ではありません。個別の川については、その川の河川整備基本方針や浸水想定区域図の前提を見に行くしかありません。

「うちの拠点はハザードマップで色が付いていないから関係ない」という読み方もあります。ですが、色が塗られた図の多くは想定最大規模の降雨を前提にしています。国土地理院は、想定最大規模を「1年間にその規模を超える降雨が発生する確率(年超過確率)が概ね1/1000である、その地域において想定し得る最大規模の降雨」と定義し、計画規模については「河川の重要度に応じて年超過確率が概ね1/10~1/200となるよう設定された降雨」と説明しています[1]。前掲の表と同じ計算をすると、年超過確率1/1000の降雨が30年のあいだに1回以上起きる確率は約3%、50年でも約5%です。1/100の約26%とは一桁違います。つまり、色が塗られた図が前提にしているのは、1/100の図が前提にする雨より起きにくい雨です。ただし、この図は対象河川、降雨波形、地形、河道や施設などの条件を置いた氾濫解析の結果で、拠点そのものの年間浸水確率を直接示すものではありません。図で色が付かなかったことは、その解析条件で浸水が計算されなかったという意味であって、拠点が浸からないという保証ではありません。

拠点台帳に「どの確率の図を見たか」を残す

頻度別に読む材料は、すでに公表され始めています。国土交通省のガイドラインは、多段階の浸水想定図と水害リスクマップの氾濫解析について、降雨の確率規模を「年超過確率1/10(高頻度)、1/30(中高頻度)、1/50(中頻度)、1/100(中低頻度)の4ケースを標準とし、計画規模が1/150又は1/200の水系はそれぞれ1/150又は1/200(低頻度)を追加した5ケースとする」と定めています[7]。凡例にも確率規模を付け、「高頻度(1/10)」から「低頻度(1/150又は1/200)」までを表示すると書かれています[7]。想定最大規模の1枚だけでは分からない、頻度ごとの浸水深が読めます。

当社が支援する現場でも、拠点台帳の水害の欄が「ハザードマップ確認済み」の一行で終わっていて、どの規模の雨の図を見たのかが残っていない例を見ます。この一行では、隣の拠点との比較も、5年後の再確認もできません。

拠点ごとに書き足すのは、次の三つです。

  • どの年超過確率の図を見たか
  • その図での浸水深は何mか
  • その拠点をあと何年使うか

三つがそろえば、年超過確率と年数から「保有年数のあいだに1回以上その規模を超える確率」が出ます。ただし、この累積超過確率に1回あたりの休業損失と復旧費をそのまま掛けても、保有期間全体の期待損失にはなりません。浸水に至る条件、浸水深ごとの被害額、複数回の発生、将来の損失を現在価値へ直す割引率を加え、年ごとの期待損失を積み上げます。そこまでそろえると、止水板の設置、設備のかさ上げ、拠点の移転という候補を、同じ物差しの上で比較できます。

確率の数字を万能の順位表にはできません。気象庁は、確率降水量が大きい地点ほど災害が発生しやすいわけではないとして、「大雨に伴う災害の起こりやすさは、その地域の地形や地質などによって異なります」と注意しています[4]。雨の確率は、被害の確率ではありません。地形と排水施設の条件は、拠点ごとに現地で確かめる必要が残ります。

それでも、30年で26%という数字は投資判断の入口として使えます。「100年に1度」を1年あたりの1%に戻し、保有年数と拠点の散らばり方を踏まえて累積確率を見ます。さらに、拠点ごとの浸水条件と被害額を重ねれば、先送りの根拠だった言葉を、金額の付いた選択肢へ変える準備が整います。

参考・一次ソース

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拠点台帳の水害の欄を「どの年超過確率の図で、浸水深が何mか」まで書き直し、保有年数の累積確率と休業損失を突き合わせて止水投資の順位を出したい。そうした頻度別ハザード情報の整理と拠点台帳への落とし込みは、アハクラフトにご相談ください。

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