- 空間データ基盤とは。同じ地図データを部署ごとに作り直す無駄を止める「置き場の統合」
2026.07.24 GISデータ基盤・地理空間AI 
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専門部署にたまった地図やデータは、部署をまたいだ判断に使える形へ集めて初めて価値になります。ところが同じ場所の情報が、営業はExcel、現場は紙の台帳、基幹システムはまた別のDBと、部署の数だけ別々に置かれていることがあります。
このとき会社は、同じ場所を何度も調べ直しています。しかも別々に作った地図は互いに微妙にズレます。重ね合わせようとすると、道路の上に建物がはみ出す。作り直しても、束ねられません。
この散らばりを一つに集めるのが空間データ基盤です。ただしここでいう「集める」は、全社に地図を配ることでも、どのデータをどう使うか決めることでもありません。その二つとは別の層です。では、何をどこまで揃えれば、作り直しは止まるのでしょうか。
空間データ基盤とは、置き場と位置の基準を揃える層
空間データ基盤とは、部署ごとに散らばった地図の台帳を一つの空間データベースに集め、位置の基準(座標系や共通のID、データ形式)を揃える層です。地図まわりの仕事は、この統合層と、集めた地図をブラウザで全社に配る配信層、そしてどのデータをどの順で使うかを決める判断の三つに分かれます。空間データ基盤が受け持つのは、いちばん下の統合層です。
配信の仕組み(WebGIS)は、すでに整った地図を配るところから始まります。集める前の地図がバラバラなら、配信層をどれだけ立派にしても、配られるのはバラバラな地図です。統合層は、その手前で置き場と位置の基準を一つに寄せます。
位置の基準が揃っていないと、集めても重ねられません。重ねられないから、各部署は隣が持っているデータを使えず、自前で作り直します。この作り直しが、同じ場所への二重のコストになります。
なぜ散らばると作り直すのか
同じ問題を国がすでに解いています。国土地理院が整備する基盤地図情報です。2007年に施行された地理空間情報活用推進基本法(平成19年法律第63号)が、電子地図上で位置を定める基準となる情報を基盤地図情報と定義しています。具体の項目は国土交通省令が定め、測量の基準点や海岸線、行政区画の境界、建築物の外周線などが並びます。
整備の理由を、国土地理院は重複の回避だと説明しています。異なる機関が別々に整備した地図は微妙にズレて、重ね合わせると道路の上に建物がはみ出してしまう。だから皆が共通の位置の基準を用いる必要がある、という趣旨です。共通の基準の上に載せて初めて、各機関の情報を正しくつなぎ合わせ、重ね合わせられるようになります。
会社の中で起きていることも、構造は同じです。営業が持つ顧客の位置と、現場が持つ設備の位置が、別々の基準で作られていれば重ねられません。国が全国の縮尺でぶつかった問題に、一つの会社が自社の地図でぶつかっているだけです。統合とは、この共通の位置の基準を先に置くことを指します。
束ねるとは、座標系とIDと形式を揃えて一つのDBに寄せること
統合層が実際に揃えるのは、三つです。第一に座標系。どの部署のデータも同じ座標系に合わせないと、載せた瞬間に位置がずれます。第二に共通のID。同じ施設に同じ鍵を振っておくと、営業の台帳と現場の台帳を鍵で突き合わせられます。第三に形式。データの入れ物を、GeoPackageのような公開標準(OGC採択、SQLiteベースでベクタやラスタ、属性を1ファイルに収める)に寄せておくと、道具を替えても読めます。
集めた先の格納は、使い方で選びます。複数の部署や仕組みが同時に読み書きするなら、OGC Simple FeaturesをSQLで実装したPostGISのような空間データベースに置きます。現場へ持ち出す、offlineで使う、といった一時利用なら、そこから範囲を切り出したGeoPackageを渡します。
三つを揃えて一つのDBに寄せておくと、次に同じ場所を必要とした部署は、調べ直さずに同じ鍵で引けます。何度も繰り返していた調査が、一度で済みます。
どこからは統合層の仕事でないか
統合層が保証するのは、データが重ねられること、同じ鍵で引けることまでです。それ以外は別の作業です。
一つは配信です。一つのDBに集めても、それが担当者一人のPCに閉じていれば、全社は使えません。ブラウザのURL一つで配るのは配信層(WebGIS)の仕事で、統合とは別に設計します。
もう一つは判断です。置き場と形式を揃えても、どのデータをどの順で使うかの判断が個人の頭に残っていれば、その人が辞けた時点で再現できません。判断基準を言語化して残す作業は、統合層の外にあります。
「基盤を作れば全部片づく」と読みたくなりますが、そうではありません。汚いデータを一つのDBに集めても、汚いまま重ねられるだけです。統合が止めるのは作り直しの重複であって、データの中身の正しさや、使い方の判断までは面倒を見ません。だから統合層への投資は、配信と判断への投資と分けて見積もります。
次の一手
空間データ基盤は、置き場と位置の基準を揃える統合層です。国が基盤地図情報でやったことの、社内版だと考えると外しません。散らばりを止める入口は、道具選びの前にあります。
まず、自社の地図データがいくつの置き場に、どの座標系とどのIDで散っているかを数えます。そのうえで共通の位置の基準を先に決め、一つの空間DBへ寄せます。ここまでを済ませてから、配信と判断をそれぞれ載せていきます。
残る問いが一つあります。共通の基準に選ぶ座標系は、扱う範囲が全国か一都市かで変わります。この取り決めを発注時に握れるかどうかで、あとから足せる基盤になるか、作り直しになるかが分かれます。
参考・一次ソース
- 国土地理院「基盤地図情報とは」(重複回避・共通の位置基準の趣旨)
- 国土地理院「地理空間情報活用推進基本法・基本計画とは」(平成19年法律第63号、平成19年8月29日施行)
- 国土地理院「地理空間情報活用推進基本法に基づく省令・告示の施行について」(項目は国土交通省令で規定)
- OGC GeoPackage 公式(SQLiteベースの単一ファイル標準)
- PostGIS 公式ドキュメント(OGC Simple Feature Access に準拠)
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自社の地図データがいくつの置き場に、どの座標系やIDで散っているかを数えるところから、共通の位置基準を決めて一つの空間DBへ寄せる設計まで手が回らないときは、アハクラフトにご相談ください。