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ネットワークGISとは。停電の影響戸数を地図から即答できるかが復旧速度を分ける
2026.08.01 GISデータ基盤・地理空間AI

電力会社で停電が起きたとき、落ちた変圧器の下流に何軒の顧客がぶら下がっているかを地図から数秒で数えられる会社と、現場と台帳を突き合わせてから戸数を報告する会社があります。差は設備の新旧ではありません。地図が設備と経路と顧客を「つながり」として持っているかどうかです。設備の図面や顧客の台帳は、部署をまたいだ判断に使える形へつないで初めて、復旧の手配や新規接続の可否判定を速くします。この記事の問いはひとつです。設備を地図に表示することと、ネットワークGISを持つことは、何が違うのでしょうか。

設備を地図に置いても「その先」は答えられない

多くの現場で、設備の位置はすでに地図になっています。電柱、変圧器、開閉器、管路。図面PDFや点と線を並べたレイヤとして、どこに何があるかは表示できます。

ところが、そこから先の問いには答えが出ません。「この開閉器を切ると、どの顧客が停電するか」。「この住所に新しく引き込むと、上流の変圧器の容量は足りるか」。地図が点と線の絵でしかないと、これらは地図の外にある別の情報です。設備台帳は基幹システムのテーブルに、顧客は顧客管理に、どの設備がどの設備の下流にあるかという結線は担当者の頭の中に、それぞれ分かれて置かれています。

当社が支援する現場でも、設備の図面と顧客の一覧と結線の知識が三つ別々に管理され、停電の影響範囲を出すたびにベテランが図面をたどって手で照合する、という状態をよく見ます。地図はあるのに、地図が判断を出せていない状態です。

ネットワークGISは「つながり」を持たせて供給可否を判定する

ネットワークGISとは、設備の位置を表示するだけでなく、設備どうしの接続と、設備から顧客までの供給経路をデータとして持たせ、サービスを提供できる場所と、影響が及ぶ顧客を判定する仕組みです。地図の上に、点と線ではなく「どこからどこへ流れているか」を載せます。

基本になるのは、設備を「ノード」、設備間を結ぶ電線や管路、回線を「エッジ」として、その接続関係ごと保存するデータモデルです。オープンソースの空間データベース PostGIS には、地物の接続をノード・エッジ・フェイスとして管理する Topology の機能があります。そこに pgRouting のようなネットワーク解析の拡張を組み合わせると、地図の一点を起点に接続をたどれます。上流をたどれば事故点の手前にある保護機器や開閉器を探せます。下流をたどれば、そのラインから供給を受けている設備や顧客を数えられます。設備を並べただけの地図には、この上流・下流という向きがありません。

実装は一つの製品に縛られません。商用の設備ネットワーク製品にも同じ考え方の実装はありますが、PostGIS と pgRouting を軸に、SQLやグラフ探索処理で業務に必要な範囲だけを組む選び方もできます。相違するのは、複雑な接続ルールや履歴管理をどこまで既製の機能に任せるかです。共通するのは、製品名ではなく、設備を点と線の絵ではなく接続関係として保存することです。

電力の現場で、何が速くなるか

この上流・下流の向きが、電力の現場で二つの答えを地図から出します。第一に、停電時の影響戸数。落ちた設備の下流を数えれば、何軒に影響するかを現地確認の前に把握でき、復旧の手配と広報の初動が速くなります。第二に、新規接続の可否。引き込み先から上流をたどれば、その先の設備に余力があるかを図面照合なしで確かめられ、可否の返答が現地調査待ちから前倒しになります。

「うちは供給エリアが狭いから、そこまでの仕組みは重すぎる」という声はあります。ただし影響戸数の照合や可否判定が特定のベテランの記憶に依存している限り、その人が異動・退職した時点で、範囲の大小に関わらず判断が止まります。規模の問題ではなく、判断が地図に載っているか担当者に載っているか、の問題です。

注意したいのは、ネットワークGISが万能の自動化ではないことです。トレースが正しい答えを返すのは、設備の結線が正しく整備されているときに限られます。どの設備がどの設備の下流かが実態とずれていれば、地図はもっともらしい嘘の影響範囲を返します。ここは以前に書いた配信の層とも、集約の層とも違います。WebGIS は一人のPCに閉じた地図をブラウザで全社に配る配信層で、空間データ基盤は散らばった台帳を一つに集めて座標系やIDを揃える統合層でした。ネットワークGISはその上で、集めて配った設備に「つながり」という意味を与える層です。配っても集めても、結線という意味を持たせなければ供給可否は出てきません。

まず結線を地図に載せる、ツールはその次

結論を分けて置きます。ネットワークGISは、設備の位置に接続と供給経路を持たせ、影響が及ぶ顧客と供給できる場所を地図から判定する仕組みです。限界は、その判定が結線データの正しさに依存し、地図に点と線を描くだけでは成立しないことです。示唆は、製品の選定より先に、どの設備がどの設備の下流にあるかという結線を、担当者の頭から地図の上へ移す整備が要る、ということです。

電力・通信・ガスのどれであっても、明日の一手は同じ入口から始まります。停電の影響戸数や新規接続の可否を、いま誰が、どの資料をたどって答えているか。その照合作業を一度書き出せば、地図に載せるべきつながりの形が見えてきます。冒頭の「下流に何軒か」を数秒で返せる会社と、突き合わせに時間を使う会社の差は、そこから縮められます。

参考・一次ソース

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停電の影響戸数や新規接続の可否が特定の担当者の記憶に頼っているなら、その照合作業の棚卸しと、結線を地図に載せる設備データの設計から、アハクラフトにご相談ください。オープンソースを軸に、必要な範囲だけを組みます。

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