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道路冠水の被害、半分超は浸水想定区域の外。対策予算は地形の集水解析で絞る
2026.08.19 GISデータ基盤・地理空間AI

令和8年8月の千葉豪雨では各地で浸水被害が出ました。被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。冠水した道路で車が動けなくなり、水深の見えないアンダーパスのように命に関わりかねない場所も水に浸かりました。同じ規模の雨は今後も起こり得ます。次の豪雨で人と車をどこから先に守るか、その順位付けを川の氾濫を前提にしたハザードマップだけで組むと、限られた対策予算が被害の多くを取りこぼします。ウェザーニューズが千葉豪雨の被害報告およそ2万件を分析したところ、55.7%は低位地帯や浸水想定区域の外から寄せられていました。標高や傾斜という地形のデータを、雨水がどこへ集まるかの判断に変えれば、川のハザードマップに載らない冠水地点を豪雨の前に絞り込めます。道路冠水は、いまあるハザードマップでどこまで見えるのでしょうか。

道路冠水とは何か。冠水と浸水、内水と外水

気象や防災の用語では、道路や田畑が水をかぶることを「冠水」、建物や物が水にひたることを「浸水」と使い分けます。同じ大雨でも、道路が水に沈めば冠水、家の中に水が入れば浸水です。

冠水を起こす水は、大きく二つの経路で来ます。一つは川の水が堤防を越えたりあふれたりして市街地へ流れ込む外水氾濫、もう一つは雨が下水道や排水路の能力を超えて地上にあふれる内水氾濫です。川から離れた場所で道路が沈むのは、多くが後者です。

道路冠水でとくに人命に近いのがアンダーパスです。立体交差でまわりより低くなった区間で、国土交通省によれば全国に約3,700か所(令和7年3月末時点)あります。排水ポンプの能力を超える雨が降ると水がたまり、外から水深が見えないまま車が入り込みます。

原因が外水か内水かで、対策を持つ部署も予算の出どころも変わります。川なら河川管理、下水道や排水路なら下水道部局、通行規制やアンダーパスの排水は道路管理です。「水害対策」とひとくくりにすると、どの被害を誰の予算で防ぐのかがぼやけます。

なぜ被害の半分がハザードマップの外で起きるのか

浸水想定区域に入っていない場所で、なぜ道路が沈むのでしょうか。区域の作られ方に理由があります。

浸水想定区域は、主に川の氾濫(外水)を前提に、どの川がどれだけあふれたらどこまで浸かるかを描いたものです。内水氾濫は前提が違います。雨が下水道の流せる量を超えて地上にあふれる現象で、川のそばでなくても、まわりより低い交差点やアンダーパスなら起きます。だから河川を基準に引いた区域の外にも、冠水しやすい場所が残ります。

ウェザーニューズは千葉豪雨の被害報告およそ2万件を分析し、低位地帯または浸水想定区域の内から寄せられた報告が44.3%、外からが55.7%だったと発表しました。区域の外からの報告のほうが多い、という結果です。

下水道が一度に流せる雨の量には計画上の上限があり、それを超えた分はどこかへあふれます。あふれ先は、地形で低くなった場所です。区域図が川を基準に引かれている以上、内水であふれた水がたまる低地は、区域の内側にも外側にも散らばります。

ここでの取りこぼしは、そのまま予算の空振りになります。河川の区域だけを見て対策箇所を選ぶと、被害の半分以上が起きる場所に予算が届きません。

冠水しやすい場所は地形から先に当たりをつけられる

では、区域の外の冠水地点を、豪雨の前にどう見つけるか。手がかりは地形です。

水は高い所から低い所へ集まります。標高と傾斜から、ある地点にどれだけの範囲の雨水が流れ込むか(集水範囲)を計算すると、まわりより低くて水がたまりやすい交差点や道路を、地図の上で先に絞れます。当社が上下水道コンサル向けに有償で提供してきた集水範囲の作成は、この計算です。

ただし地形だけで冠水は決まりません。実際にあふれるかは、その場所の下水道の管路の太さ、ポンプの能力、排水の向きにも左右されます。地形はあくまで「どこがあやしいか」の当たりで、そこから下水道台帳や既往の冠水履歴、現地確認で裏を取る必要があります。地図データを機械にかければ全部の冠水地点が自動で出てくる、というものではありません。当たりをつけて探索の範囲を絞り、機械と現場で確かめる順番です。

「うちは川から離れているから内水は関係ない」という声もあります。内水氾濫は川がなくても起きる現象なので、離れていること自体は安全の根拠になりません。むしろ河川のハザードマップが薄い地域ほど、地形からの当たりづけが効きます。

まとめ。対策予算をどこへ配るか

千葉豪雨では、浸水被害の半分以上が河川の氾濫を前提にした想定区域の外で起きました。想定区域が主に捉えるのは外水氾濫で、区域の外で道路を沈める水の多くは内水氾濫です。だから対策箇所の順位付けを区域図だけで組むと、内水による冠水を取りこぼします。

順番はこうです。まず標高と傾斜の集水解析で、水がたまりやすい交差点・道路・アンダーパスに当たりをつける。次に既往の冠水履歴と下水道台帳を重ね、現地で裏を取る。そのうえで、ポンプの増設・排水路の改良・事前の通行規制の優先順位を決めます。

防災課・道路管理課・下水道課がそれぞれの地図を持ち寄り、冠水履歴と集水地形を一枚に重ねれば、来年度の予算をどの箇所から手当てするかを、被害が出る前に議論できます。国土交通省の「重ねるハザードマップ」には道路冠水想定箇所も載っており、出発点として使えます。そこに、区域の外まで見る地形の当たりを足すかどうかで、次の豪雨で人と車を守れる場所が変わります。

参考・一次ソース

■お問い合わせ

既往の冠水履歴と集水地形を重ねて、来年度予算の対象を防災課・道路管理課・下水道課で絞りたい。地形からの事前診断で対策箇所の当たりをつけたい。そうした自治体向けの道路冠水・内水浸水リスクの事前診断は、アハクラフトにご相談ください。

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